事業報告書(令和5年度)

【事業概要】
 令和5年度の事業運営については、新型コロナウイルス感染症が収束に向かう中で春の慰霊祭、夏まつりなど恒例行事をコロナ禍以前に近い形で着実に実施することができた。産業殉職者合祀慰霊式についても、コロナ禍以前に近い形式で厳粛に挙行され、奉賛会としても適切に支援・協力した。
 また、高尾みころも霊堂建立50周年記念事業については、令和5年度をもって計画どおり無事終了することができた。
 次に、労働災害殉職者のご遺族からのご意見等も踏まえ新たに「ご遺族懇談会」を開催した。これにより孤立しがちなご遺族がその経験を語り合いながら相互に交流することで絆を深めていただいた。参加者からも好評で、また奉賛会としてもご遺族のお気持ちに接し、重なご意見もいただくなど有意義なものとなった。
 運営面では、令和5年6月に奉賛会会長及び理事長等の交代があり、新たな法人運営体制となり、これまで以上に積極的かつ強力に奉賛会活動を推進することができた。
 一方、財政面では、奉賛会の厳しい財政状況を踏まえて、労働災害殉職者の多くを占める建設業界の代表である一般社団法人日本建設業連合会(日建連)に対して支援要請を行った。
 この支援要請を受けて、日建連においては奉賛会の活動についてご理解をいただき、令和5年9月に日建連会長名で傘下会員企業141社に「産業殉職者霊堂奉賛会への入会のご検討のお願い」を発出していただくご高配を賜った。その結果、新たに46社について入会をしていただき、会費収入の増加を図ることができた。
 これらの事業運営の下で、全体の収支状況は、昨今の急激な諸物価高騰により一層厳しい状況が見込まれたが、法人会費増加もあり概ね計画に近い形で収まる結果となった。

【主要事業】

I.慰霊敬仰など奉賛活動の推進

  1. 慰霊敬仰事業
    (1)春の慰霊祭と夏まつり
     春の慰霊祭を5月13日(土)、夏まつりを8月5日(土)に実施した。
     春の慰霊祭は、祭祀堂広場において霊位の遷座行列、箪曲奉納、お供茶奉納、ご遺族の献花などにより御霊を慰霊した。コロナ禍で中止していた遺族休憩所でのお茶会を含め、従来形式で実施できた。
     夏まつりについても、コロナ禍前並みの大勢の参加をいただき、大変好評を博した。
    (2)永代供養慰霊式の開催
     永代供養慰霊式は、従前どおり霊堂9階において第11回を9月、第12回を3月に、奉賛会役職員のほか、労働者健康安全機構等の協力を得て慰霊の言葉奉上、献花、さらに各祭壇には供花等を捧げ、御霊を慰霊した。
    (3)産業殉職者合祀慰霊式への協力(主催:労働者健康安全機構)
     令和5年の合祀慰霊式は10月25日(水)、ご遺族、厚生労働大臣(代理厚生労働審議官)、労働団体・経済団体代表及び労働災害防止団体等多数の関係者がご参列され、新たに2,389名の御霊を霊堂に合祀奉安した。ご参列できなかったご遺族等のためインターネットによるライブ配信も行われた。
     奉賛会は、式典での霊位奉安を始め、後援団体として慰霊式への適切な支援・協力を行った。
    (4)高尾みころも霊堂建立50周年顕彰・記念事業の実施
     霊堂建立50周年を社会一般への広報・周知の契機と捉えて、かねてより計画していた記念ビデオ、記念追悼文集の作成・配布などの諸事業について適切に実施し、令和5年度をもって計画どおり終了した。これらの活動により、霊堂の存在意義等について、広く周知し、労働災害の根絶に向けた気運の醸成に努めた。
  2. 環境整備事業
    (1)花壇等への植栽
     霊苑内の花壇等に、年数回適時に分けて四季折々の花を植栽するなど、環境美化に努めた。
    (2)霊苑内の環境美化
     「故郷の森」、記念樹等の整備、剪定及び除草など環境の美化に努めた。
    (3)祭壇などへの供花
     祭壇などに生花を絶やさないよう随時供花を行った。

II.産業殉職者遺家族をはじめとする会員等に対する相談支援活動の強化

  1. 相談支援事業
    (1)相談事業
     祭祀等に関する相談を、随時、当会職員が直接又は電話相談等により行った。また、合祀慰霊式においては、遺族相談窓口を設けて相談対応を行った。
    (2)会員サービス事業
     会員証の利用による宿泊割引制度の実施、無料給茶機の運営及び「霊堂四季の写真」の無料提供等を行った。
    (3)代理参拝支援事業
     会員の高齢化、遠隔地在住の会員のため、代理参拝(納骨壇の清掃、供花、参拝)支援を行った(供花料のみ実費)。
  2. 交流事業
    (1)「ご遺族懇談会」の開催
     労働災害殉職者のご遺族が孤立しがちな実情を踏まえ、その経験を共有し交流できる場をご提供するため、5月13日「春の慰霊祭」の後に、霊堂にて9名のご遺族にご参加いただき、「ご遺族懇談会」を試行的に初めて開催した。その際のご意見・ご感想なども踏まえて、産業殉職者合祀慰霊式の前日となる10月24日、霊堂近隣ホテルを会場として本格的に「ご遺族懇談会」を開催した。
     当日は、本年合祀慰霊式のご遺族代表を含め合計で15家族24名のご遺族にご参加いただき、それぞれのご経験などを自由に語り合いながら、交流を深めていただいた。奉賛会としても、ご遺族の皆様のお気持ちに接することができ、また貴重なご意見などをいただくことができて大変有意義なものとなった。さらに、懇談会は大手新聞社等の取材を受け、大きく報道されるなど社会的にも注目を集めた。ご遺族のご希望などを踏まえ、引き続き継続して開催することとした。
    (2)行事、会報等を通じた交流推進
     「春の慰霊祭」、「夏まつり」及び「奉賛会会報」誌上等を通じて会員の交流を進めた。令和3年産業殉職者合祀慰霊式の遺族総代表、深迫祐一様、祥子様ご夫妻が立ち上げたNPO法人コーヒーエイド2021が主催する「コーヒーエイド2023チャリティーイベント」に後援団体として、理事長以下役職員が参加・協力した。
    (3)「霊堂写真集」、「参拝交流ノート」の展示・供覧
     「霊堂写真集」及び「参拝交流ノート」の展示・供覧を実施して、参拝される遺族や会のさらなる交流促進並びに安らぎと癒しの場の提供に努めた。
III.奉賛会の活動の充実強化
  1. 奉賛会活動の基盤の整備
    (1)産業界に対する財政支援要請活動による新規法人会員の拡大
     昨今の諸物価高騰などによる奉賛会の厳しい財政状況を踏まえて、労働災害殉職者の多くを占める建設業界の代表である一般社団法人日本建設業連合会(日建連)に財政支援をお願いした。具体的には、7月、8月にゼネコン大手5社などのトップに対して奉賛会会長及び理事長が直接面談の上支援要請を行った。これを受けて日建連は、奉賛会活動にご理解いただき、9月22日付で傘下企業141社宛てに、宮本会長名で「産業殉職者霊堂奉賛会への入会のご検討のお願い」を発出していただくご高配を賜った。その結果、新たに46社の加入をしていただき、会費収入増加を図ることができた。今般の日建連会員企業のご支援も踏まえて、広く産業界並びに関係団体等に対して、引き続き支援要請活動を拡大・推進することとした。
    (2)新規個人会員等の加入促進活動
     新規合祀奉安者の遺族を始め、納骨壇利用契約者など関係者に対する加入要請を積極的に行った。
    (3)地域社会、関係団体との連携の強化
     春の慰霊祭、夏まつりを始め奉賛会の活動を通して、地域団体等の積極的な参加と協力の強化・推進に努めた。
  2. 広報・普及啓発活動の強化
    (1)マスコミ取材の積極的受け入れによる報道・広報
     前記Ⅱの2.交流事業で前述したとおり、「ご遺族懇談会」について、参加者のご了解を得た上で積極的に大手新聞社等の取材を受け、新聞、テレビなどで大きく報道していただくことにより、社会一般に対して労働災害ご遺族の実情や霊堂の設立意義などについて広報・周知することができた。
    (2)広報媒体等を利用した広報活動の強化
     奉賛会ホームページの随時更新、「奉賛会会報第57号」(12月に約7,000部)の発行及び「奉賛会ニュース」(6月)の会員等への送付などにより、タイムリーな情報提供等による広報・普及啓発活動の強化にも努めた。
    (3)各種事業を通じた産業殉職者慰霊顕彰の重要性の普及啓発
     企業及び関係団体に対して、霊堂の利用並びに見学等について働きかけた。
    11月1日、建設業労働災害防止協会の賛助団体である「建設業労働災害防止共進会」に霊堂の参拝・見学をしていただいた。
     また、9月27日から29日には、中央労働災害防止協会が主催する大規模企業展示会「緑十字展」に労働者健康安全機構と初めて共同出展し、霊堂や奉賛会の紹介等に努めた。
  3. 産業災害の防止及び産業殉職者の顕彰に向けた機運の醸成
    (1)第11回産業殉職者霊堂協力連絡会議の開催
     労働災害防止団体、安全衛生団体等との第11回協力連絡会議を9月8日学士会館にて開催し、各団体の労働災害等の事例紹介、傘下企業の高尾みころも霊堂利用奨励及び各団体の広報誌上での奉賛会の紹介等を含めて意見交換を行った。
    (2)講演事業等
     慰霊の重要性、災害防止対策等の大切さ等についての講演事業等の募集並びに呼掛けを行った。
     前述「2.広報・普及啓発活動の強化」の(3)のとおり、11月1日には「建設業労働災害防止共進会」による霊堂の参拝・見学をしていただいた。当日は、共進会関係の17企業・団体から23名のご参加があり、霊堂参拝・見学とともに、奉賛会からは霊堂の存在意義及び奉賛会の役割等を含む詳細なレクチャーも行った。前述の記念ビデオ等も活用した。

Ⅳ.奉賛会会員の状況

会員区分 令和4年度末会員数 令和5年度入退会 令和5年度末会員数
入会 退会 会員数
個人会員 3,461 54 140 3,375
 殉職会員 2,387 53 82 2,358
 一般会員 1,074 1 58 1,017
法人会員 129 42 6 165
特別法人会員 13 6 0 19
合  計 3,603 102 146 3,559