事業報告書(令和6年度)

【事業概要】
 令和6年度の事業運営については、新型コロナウイルス感染症問題も収まり春の慰霊祭、夏まつりなど恒例行事を従来どおりに開催することができた。産業殉職者合祀慰霊式についても、例年どおり後援団体として式典運営に協力した。
 次に、労働災害殉職者のご遺族からのご意見等も踏まえ昨年から開催している「ご遺族懇談会」について、合祀慰霊式に合わせる形で第2回目を開催した。これにより孤立しがちなご遺族がその経験を語り合いながら相互に交流することにより絆を深めていただいた。参加ご遺族からも好評を博すとともに、奉賛会としてもご遺族のお気持ちに接し、貴重なご意見をいただくなど、改めて労働災害防止取組の重要性等を認識する有意義なものとなった。
 財政面では、奉賛会の厳しい財政状況を踏まえて、昨年度は労働災害殉職者の多くを占める建設業界の代表である一般社団法人日本建設業連合会(日建連)に対して支援要請を行った。その結果、日建連においては奉賛会の活動についてご理解、ご協力をいただき、多くの会員企業の新規加入があり、会費収入増加を図ることができた。
 今年度は、日建連と並ぶ日本の建設業代表団体である全国建設業協会(全建)に財政支援要望を行い、趣旨ご了解いただき11月に特別法人会員として加入していただいた。
 さらに、全建会員である各都道府県建設業協会に入会依頼するとともに、傘下の会員企業に対して当奉賛会への入会案内の依頼も併せてお願いした。
 また、1月にご逝去された一般個人会員の方から、10月に遺贈という形で約1,500万円の高額寄付をいただいた。今後は、ご遺志を尊重し公益目的事業のための積立資金として計上の上、慰霊敬仰や遺族支援等の諸事業に大切に使用させていただくこととした。
 これらの事業運営により、全体の収支状況は昨今の急激な諸物価高騰により一層厳しい状況が見込まれたが、法人会費増加もあり、高額寄付を除いても概ね計画に近い形で収まる結果となった。

【主要事業】

I.慰霊敬仰など奉賛活動の推進

  1. 慰霊敬仰事業
    (1)春の慰霊祭と夏まつり
     春の慰霊祭を5月11日(土)、夏まつりを8月3日(土)に実施した。
     春の慰霊祭は、祭祀堂広場において霊位の遷座行列、筝曲奉納、お供茶奉納、ご遺族の献花など、従来通りの形式により御霊を慰霊した。夏まつりについても、一般市民を含めコロナ禍前並みの大勢の参加をいただき、大変好評を博した。
    (2)永代供養慰霊式の開催
     春秋のお彼岸に行う永代供養慰霊式は、従前どおり霊堂9階において第11回を9月、第12回を3月に、奉賛会役職員のほか、労働者健康安全機構等の協力を得て慰霊の言葉奉上、供花及び献花等を捧げ、御霊を厳かに慰霊した。
    (3)産業殉職者合祀慰霊式への協力(主催:労働者健康安全機構)
     令和6年合祀慰霊式は、10月23日(水)、ご遺族、厚生労働大臣(代理 厚生労働審議官)、労働団体・経済団体代表及び労働災害防止団体等多数の関係者が参列し執り行わられ、新たに2,494名の御霊が霊堂に合祀奉安された。参列できなかったご遺族等のためインターネットによるライブ配信も行われた。
     奉賛会は、式典での霊位奉安を始め、後援団体として慰霊式典運営に支援・協力を行った。
  2. 環境整備事業
    (1)花壇等への植栽
     霊苑内の花壇等に、年数回適時に分けて四季折々の花を植栽するなど、環境美化に努めた。
    (2)霊苑内の環境美化
     「故郷の森」、記念樹等の整備、剪定及び除草など環境の美化に努めた。
    (3)祭壇などへの供花
     祭壇などに生花を絶やさないよう随時供花を行った。

II.産業殉職者遺家族をはじめとする会員等に対する相談支援活動の強化

  1. 相談支援事業
    (1)相談事業
     祭祀等に関する相談を、随時、当会職員が直接又は電話相談等により行った。また、合祀慰霊式においては、遺族相談窓口を設けて相談対応を行った。
    (2)会員サービス事業
     会員証の利用による宿泊割引制度の実施、無料給茶機の運営及び「霊堂四季の写真」の無料提供等を行った。
    (3)代理参拝支援事業
     会員の高齢化、遠隔地在住の会員のため、代理参拝(納骨壇の清掃、供花、参拝)支援を行った(供花料のみ実費)。
  2. 交流事業
    (1)「ご遺族懇談会」の開催
     労働災害殉職者のご遺族が孤立しがちな実情を踏まえ、その経験を共有し交流できる場をご提供するため、産業殉職者合祀慰霊式前日の10月22日、霊堂近隣の八王子市浅川市民センターを会場として、第2回目となる「ご遺族懇談会」を開催した。
     当日は、本年合祀慰霊式のご遺族代表を始め合計で8家族10名のご遺族に参加いただき、それぞれのご経験などを自由に語り合いながら、交流を深めていただいた。奉賛会としても、ご遺族の皆様のお気持ちに接することができ、また貴重なご意見などをいただくとともに、労働災害防止取組の重要性を再認識するなど大変有意義なものとなった。さらに、懇談会は大手新聞社等の取材を受け、大きく報道されるなど社会的にも注目を集めた。ご遺族のご希望などを踏まえ、引き続き継続して開催することとした。
    (2)行事、会報等を通じた交流推進
     「春の慰霊祭」、「夏まつり」及び「奉賛会会報」誌上等を通じて会員の交流を進めた。令和3年産業殉職者合祀慰霊式の遺族総代表、深迫様ご夫妻が立ち上げた「NPO法人コーヒーエイド2021」が主催する「コーヒーエイド2024チャリティーイベント」に、後援団体として理事長以下役職員が参加・協力した。
    (3)「霊堂写真集」、「参拝交流ノート」の展示・供覧
     「霊堂写真集」及び「参拝交流ノート」の展示・供覧を実施し、参拝される遺族や会員のさらなる交流促進並びに安らぎと癒しの場の提供に努めた。
III.奉賛会の活動の充実強化
  1. 奉賛会活動の基盤の整備
    (1)産業界に対する財政支援要請活動による新規法人会員の拡大
     奉賛会の厳しい財政状況を踏まえて、昨年度は労働災害殉職者の多くを占める建設業界の代表である一般社団法人日本建設業連合会(日建連)に財政支援をお願いした。これを受けて日建連は、奉賛会活動にご理解の上種々対応していただいた結果、新たに多数の傘下企業に新規加入していただき、会費収入増加を図ることができた。
     今年度は日建連と並ぶ日本の建設業界の代表団体である全国建設業協会(全建)に財政支援要望を行ったところ、趣旨ご了解いただき、11月に特別法人会員として加入していただいた。さらに、全建会員である各都道府県建設業協会に入会依頼するとともに、傘下の会員企業に対して当奉賛会への入会案内の依頼も併せてお願いした。今般の日建連、全建のご支援も踏まえて、広く産業界並びに関係団体等に対して、引き続き支援要請活動を拡大・推進することとした。
    (2)新規個人会員等の加入促進活動
     新規合祀奉安者の遺族を始め、納骨壇利用契約者など関係者に対する加入要請を積極的に行った。
    (3)地域社会、関係団体との連携の強化
     春の慰霊祭、夏まつりを始め奉賛会の活動を通して、地域団体等の積極的な参加と協力の強化・推進に努めた。
  2. 広報・普及啓発活動の強化
    (1)マスコミ取材の積極的受け入れによる報道・広報
     前述Ⅱの2.交流事業のとおり、「ご遺族懇談会」について、参加者のご了解を得た上で積極的に大手新聞社等の取材を受け、新聞、テレビなどで大きく報道していただくなど、社会一般に対して労働災害ご遺族の実情や霊堂の設立意義などについて広報・周知する活動に努めた。
    (2)広報媒体等を利用した広報活動の強化
     奉賛会ホームページの随時更新、「奉賛会会報 第58号」(12月に約7,000部)の発行及び「奉賛会ニュース」(6月)の会員等への送付などにより、タイムリーな情報提供等による広報・普及啓発活動の強化にも努めた。
     なお、例年同様、合祀慰霊式当日に遺族総代表(本年は奈良県代表)へのインタビューを行い、そのご遺族の思いなどを「奉賛会会報 第58号」に特集記事として掲載した。
    (3)各種事業を通じた産業殉職者慰霊顕彰の重要性の普及啓発
     企業及び関係団体に対して、霊堂の利用並びに見学等について働きかけた。
     先ず9月9日、大手建設会社等を会員とする団体である「建設労務安全研究会」(東京都中央区)において、奉賛会常務理事により高尾みころも霊堂と奉賛会に関する講演会を行った。
     次に、11月13日から15日にかけて、中央労働災害防止協会が主催する国内最大規模の企業展示会である「緑十字展」(広島市)に、昨年に続き労働者健康安全機構と共同出展し、霊堂や奉賛会の周知・広報等に努めた。
     さらに、今年度の霊堂見学は、1月に前田建設工業(株)、2月に陸上貨物運送事業労働災害防止協会、3月に鉄建建設㈱に、それぞれ実施していただき労働災害防止取組みの重要性等について認識を深めていただいた
  3. 産業災害の防止及び産業殉職者の顕彰に向けた機運の醸成
    (1)第12回産業殉職者霊堂協力連絡会議の開催
     労働災害防止団体、安全衛生団体等との第12回協力連絡会議を9月6日KKRホテル東京にて開催し、各団体の労働災害等の事例紹介、傘下企業等の高尾みころも霊堂見学・利用奨励及び各団体の広報誌上での奉賛会の紹介等を含めて意見交換等を行った。
    (2)講演事業等
     産業殉職者慰霊の重要性、災害防止対策等の大切さ等についての講演事業等の募集並びに呼掛けを広く行った。
     前述「2.広報・普及啓発活動の強化」の(3)のとおり、9月9日には「建設労務安全研究会」において、高尾みころも霊堂と奉賛会に関する講演会を行った。当日は、34企業、3団体から37名のご参加があり、労働災害根絶に向けた尚一層の取り組みと霊堂、奉賛会に対する支援などついてもお願いした。

Ⅳ.奉賛会会員の状況

会員区分 令和5年度末会員数 令和6年度入退会 令和6年度末会員数
入会 退会 会員数
個人会員 3,377 47 67 3,357
 殉職会員 2,358 46 38 2,366
 一般会員 1,019 1 29 991
法人会員 165 4 1 168
特別法人会員 19 2 0 21
合  計 3,561 53 68 3,546